マーケティングの今とこれからを探っていく連載コラム「ボーン・トゥ・プラン ~明日なき計画~」。第4回目となる今回は、意外とやってしまいがちな「流行に合わせた動画プラットフォーム選定」について。
ただ「流行っているから」「競合他社もやっているから」という理由だけで、なんとなく動画プラットフォームを選んでしまっていませんか?当たり前のことですが、そのような選び方をしてしまうと、満足のいくプロモーション効果を得られないばかりか、そもそも何の効果を狙って実施したのかも曖昧なため、「手段の目的化」に陥るケースが多々あります。
では、自分たちの目的に合ったプラットフォームはどうやって選べばいいのか…?デジタルマーケティングの申し子「アナイグマ」が分かりやすく解説します。
第3回はこちら。
- 目次
- アナイグマって??
- イントロダクション
- 「流行っている」という理由だけだとサステナブルではない
- 主要動画プラットフォームの特徴を把握しよう
- 訴求内容に合わせてプラットフォームを検討しよう
- 獲得したいエンゲージメントに合わせてプラットフォームを検討しよう
- アナイグマのひとこと
アナイグマって??
イントロダクション
ある日、社員Bがアナイグマに相談しにきました。
アナイグマさん、いま社内全体で「動画」を強化したいという動きがあるんですけど、動画って何から始めればいいんでしょうか?やっぱり今流行っているTikTokですかね?
たしかに色んな企業がTikTokで動画広告を配信していますよね。流行っていることをやるのは大いにありだと思います。
流行っているということはつまり・・・
- そのプラットフォームが活性化している
- 見る側(ユーザー)もコンテンツを求めている
- 活性化していれば、どんどんユーザーも集まってきたり、拡散もされやすくなる
- そうなると、TikTokで話題になっていると認知される
だから、流行っていることをやるのは大事ではあると思います。 でも、それだけの理由で選んでしまうのは勿体ないかもしれません。
え、何でですか!?
「流行っている」という理由だけだとサステナブルではない
ある商品やサービスを幅広く知ってもらうために、話題性を持たせて、盛り上げたいという時にはTikTokのようなプラットフォームを使うのも有りだと思います。要は「キャンペーン」のようにして、周知させるやり方ですね。
ただ、その盛り上がりというは持続的ではないので、未来に繋がるような施策になりにくいかもしれません。特にTikTokのようなプラットフォームで流行り続けるというのは難しいと言えるでしょう。
つまり、仮にTikTok内でバズったとしても、それは一時的なもので将来的な利益などには繋がりにくいということか…
そうですね。もちろん流行りも大切ですが、要は「何を求めてそこでやるのか」という考えの方が重要です。そのため、プラットフォームを考える時は、ユーザーが「どういう気持ち・目的」で集まっているのかを把握しておくと良いでしょう。
主要動画プラットフォームの特徴を把握しよう
「YouTube・Twitter・Facebook・Instagram・TikTok」それぞれの特徴を見てみましょう。
YouTube
言わずと知れた動画コンテンツの宝庫である「YouTube」。
閲覧数(消費されているコンテンツの数)とアクセス数はNo.1のプラットフォームです。
今だとテレビでも見れるようになっているので、ユーザーが閲覧しやすい環境が整っているのが特徴です。
幅広い年齢層に支持されていますが、コロナ禍で40代以上のユーザーも増えているというデータもあります。
今起こっている事象やその瞬間に思っていることをつぶやける「Twitter」。
最近は動画も見かけることが多くなりましたが、表現の仕方は基本テキストベースです。そのため、Twitter上で「面白い動画があるから探させる」のようなアプローチは難しく、ユーザーからすると動画への期待感はそれほど高くないと言えるでしょう。
実名登録のため、知人や同級生などのリアルな繋がりが反映されることが多い「Facebook」。そのためビジネスシーンなどフォーマルに活用されることも特徴です。
基本静止画での投稿が多いですが、タブを切り替えれば動画を見ることも可能です。しかし、ユーザーからすると動画を流し込むようなプラットフォームとしての認識は少ないかもしれません。広告に関して言うと、運営が同じ後述のInstagramと併せて配信が行われることが多くなっています。
画像を中心としたコミュニティプラットフォーム「Instagram」。
ニュースフィードには基本的にフォローしている人の投稿しか流れてこないため、ユーザーが求めているコンテンツが出てくることへの期待感が高いのが特徴です。
動画広告としては他に、フルスクリーンで表示されるストーリーズやリールズが活用されます。また、インスタライブと言ったファンコミュニティを上手く活用したプッシュ型のツールもあります。
動画はフルスクリーンで閲覧できるので、他よりもリッチに見せることが可能になっています。
TikTok
短い動画を大量に消費させるためのプラットフォームが「TikTok」。
Instagramとは異なり、フォローとは関係なく色んな動画が流れてくるので、ユーザーは一瞬にして「いる・いらない」をジャッジしながら閲覧します。つまり、見たい動画があって閲覧しているというよりは、タイムライン上で見たい動画を探しているユーザーがほとんどであると言えるでしょう。
こう見ると、それぞれのプラットフォームで特徴が全然異なるんですね!
そうなんです。各プラットフォームに対するユーザーの態度や期待感が異なるので、動画を出す場所はしっかり検討すべきポイントなんですよ。あとは、動画で訴求したい内容によっても変えるべきだと思います。
それはどういう事ですか!?
訴求内容に合わせてプラットフォームを検討しよう
最初に社員B君が提案してくれたTikTokは、先ほどもお伝えしたように短い動画をいかに面白くして話題性を作るかがポイントになるので、例えば「限定キャンペーン」のようなキャッチコピーで惹きつけてインパクトを与えられるような内容に適しています。
しかし、商品・サービスに関する「HOWto」や「ノウハウ」と言った説明を求めるような動画はTikTokには向いていません。
アテンションを前に置かなければならない
TikTokの動画は最初の3秒が重要です。短時間でユーザーの知りたいという欲求をすぐに満たしてあげることが必要です。しかし「HOWto」や「ノウハウ」というのは、じっくりと時間をかけて商品・サービスの理解してもらう場合が多いので、TikTokではそもそも見てもらえません。
動画を実施する上で「アテンションや共感」というのはとても大事ですから、そこが疎かになってしまうとユーザーは誰も見てくれなくなってしまうんです。だからこそ、ユーザー層や好まれる動画の傾向、特性に合わせた時間配分といった様々な要素を検討した上で、訴求内容に合わせたプラットフォーム選びが大切になってくるんですよ。
なるほど!せっかく配信しても「閲覧されない・エンゲージメントも低い」なんてことを避けるためには、改めてしっかり考えないとですね。
理解してもらえて嬉しいです。 ところで、「エンゲージメント」という言葉が出てきましたが、エンゲージメントについて理解してますか?
えーっと、「いいね」とか「コメント数」とかですよね?
はい、それもエンゲージメントの1つですね。だけど、それだけではないんですよ。
獲得したいエンゲージメントに合わせてプラットフォームを検討しよう
エンゲージメントってSNSの「いいね」や「コメント数」という認識を持っている人も多くいると思います。間違いではありませんが、それだけではないんです。
例えば、「共感」や「好意度」、「購買意欲」や「商品理解」というのもエンゲージメントの枠に入ってきます。
先ほどお話した「HOWto動画」というのは、いいねやコメント数というよりも、商品理解に関するエンゲージメントを高くするのが狙いです。そのため、数秒で終わるような短編動画だと、説明が疎かになりどこまで商品理解が得られたのか分からなくなってしまいます。つまり、「HOWto動画」のようなユーザーとの深いコミュニケーションが求められる場合は、それなりに尺の長い動画である必要があります。
すると、自ずと「HOWto動画」を置けるプラットフォームも限られてきます。
あたり前のことではありますが、「目的」によって使う「プラットフォームやフォーマット」を変えていかないと、理にかなったプロモーション効果が得られなくなります。
プラットフォームによって、ユーザー数や動画の尺、ユーザー層も異なってきます。いきなり、手段から選ぶのではなく、目的からゴールを決めるようにするのが鉄則ですね。
手段より、まず「目的」ですね。 アナイグマさんありがとうございます!そこから検討し直してみます!
アナイグマのひとこと
こういった類の話はよくあることです。新しい技術や仕組み、ツールがどんどん生まれるデジタルマーケティングでは、トレンドを追うこと=乗り遅れないようにする、というある種の強迫観念があるようです。もちろん新しいものを取り入れることは重要ですが、適しているか否かの判断については「周りも皆やっているから」というフィルターを通すことで鈍ってしまうこともあります。
先日ファミレスに行ったときのことですが、今ではよく目にするタッチパネル。これを導入すれば人件費削減や効率化、分析用データ取得といったメリットがありますね。ただしこの店は系列店のなかでも少し年齢層が高めのユーザーが多く利用する和食店。隣に座った高齢のご夫妻はタッチパネルを使わずに店員さんを呼んで口頭で注文していました。もう最初から「こういうの使えないから」と触ることも無かったです。お店だったら口頭注文という代替手段がありますが、デジタルマーケティングの世界で最初に拒否反応があったらそのまま離脱ですよね。新しい技術だし周りも導入しているから、という理由だけでなく、本当に自社にとって必要なものなのか、そこを突き詰めて考えるのがマーケティングの仕事だと思います。
そもそも「HOWto」や「ノウハウ」といった説明をしたいのであれば、動画で無くても良いんです。手段としての動画ありきでなく、目的を達成するための手段を突き詰めて考えるのもマーケティングの仕事だと思います。