マーケティングの今とこれからを探っていく連載コラム「ボーン・トゥ・プラン ~明日なき計画~」。第6回の今回は、まだ取り組めていない人も多い「TVとWEBを掛け合わせたプロモーション」について。「自社CMを打ち出しているけど、その効果が今ひとつわからない…」「CMの補完でデジタルも実施しているけど、統合して効果検証できていない…」「CMはやっていないけどTVのデータって使えないのかな?」などと考えている人も多いのではないでしょうか?そんな悩みや疑問に、デジタルマーケティングの申し子「アナイグマ」が分かりやすく解説します。
第5回はこちら。
- 目次
- アナイグマって??
- イントロダクション
- TV×WEBプロモーションの救世主「TVBridge Ads」とは
- 「TVBridge Ads」3つの特徴
- テレビ視聴を起点としたDSP配信の考え方
- プランで多いセグメント設計
- 成功事例の紹介
- 市場規模の成長が見込まれる「OTT市場」
- アナイグマのひとこと
アナイグマって??
イントロダクション
少し浮かない表情で、営業メンバーのたけし君がアナイグマに相談しにきました。
アナイグマさん、最近テレビCMを出稿したお客さんから、「テレビとWebを掛け合わせたプロモーションができていないが良い方法はないか」と相談を受けたんですけど…何かいい方法ってありますかね?
「テレビ」=マスと「Web広告」=デジタルをどう連携させるのかという部分に課題を感じている人は多いよね。テレビとネットの視聴情報は別々のものだし、CMを見たことがWebでのCVに寄与したかどうかもわからない、という相関性が見えない部分が大きいんだと思う。テレビとWebにまつわる悩みをまとめるとこんな感じですかね。
- CMのリーチ補完でデジタルを実施しているが効果がわからない
- 特定のテレビ番組CM視聴セグメントに配信したい
- テレビに出稿していないが視聴データを活用した広告を配信したい
単純に連携できていない、ってだけではないんですね。ん?でもなんで特定の番組のCM視聴セグメントを使いたいんですかね?
例えば子ども番組とかだと、基本「子どもがいる」家庭でそのCMを見るので、子育てに関連した商品・サービスの訴求には合ってるよね。
確かに!自分のところではCMを出稿してなくても、関連商品のCM視聴データを活用できたら良いですよね。
そう。皆が皆CM出稿できるほど予算があるわけではないし。でもデジタルだけずっとやってきたところだと、手詰まりになることも多いんですよね。
わかります。いろんな施策をやってるけど、コレ!といったものが無いから更に別のものに手を出していくんですよね。。そんなときにテレビの視聴データが使えたら良いのに。。
実は使えるんです。そんな悩みを解決するには「TVBridge Ads」というソリューションを活用するのがおすすめですよ。
え!
TV×WEBプロモーションの救世主「TVBridge Ads」とは
TVBridge Adsとは、大手テレビメーカーが保有するコネクテッドTV(インターネットに接続されたテレビ)の視聴データを活用し、拡張することなく広告配信が可能なDSPです。国内最大級のテレビ視聴データ(ソニー・パナソニック・シャープ・TVS REGZA)が、各端末から一堂に集約されるという特徴を持っています。
では「TVBridge Ads」の主な4つの機能について見ていきましょう。
ターゲットセグメント選定
まず、国内大手テレビメーカーの視聴データをワンストップで抽出し、ターゲティングが可能になります。例えば、自社CMを観ている・観ていないのように、「何を観ていて、何を観ていなかったのか」という形でもセグメントが作成できます。
テレビ視聴セグメントへの広告配信
ターゲットセグメントを作った上でDSPに連携することができるため、テレビ視聴データかつデモグラ指定等といったDSP側が持つデータと組み合わせた広告配信が可能です。
効果計測~分析まで対応可能
DSPにTV視聴データを連携して広告配信をした結果、DSP側で得られるデータからレポートを作成することが可能です。後述する「VALIS Cockpit」のユーザー分析も行えるので、配信したユーザーのWeb上の行動履歴、態度変容まで可視化します。
この分析・レポートを充実することで、分析結果からリプランニング、次にどのようなことをすれば良いか、どのターゲットに配信するのが有効なのかを考えて、PDCAを回していくことが可能なんです。
すごい…こんなツールがあるんですね!
そう、テレビとWebを掛け合わせたプロモーションに非常に便利なツールなんですよ。ではさらに詳しい特徴についても解説しよう。
「TVBridge Ads」3つの特徴
国内最大級のテレビ視聴データ
前述の通り、国内大手テレビメーカー4社(ソニー・パナソニック・シャープ・TVS REGZA)から得られる国内最大級のTV視聴データを蓄積することが可能です。
以前もこのような仕組みはありましたが、データを取得できる端末数やメーカー数が少なかったので、セグメントを作る上でのデータ量が不十分という課題がありました。しかし、この4社が集結したことによって、量・質ともにデータが向上し、そこから直接バナー配信ができるだけのデータ量を担保することが可能になりました。
テレビからデジタルへ横断した広告配信を実現
「TVBridge Ads」のDSPに直接テレビの視聴データをシンクさせることが可能なので、番組・CM・視聴データを活用して、デジタルのデバイス(スマホ・PC)といったいわゆるインターネットに接続するデバイスに横断して広告配信を行うことが可能です。
テレビ視聴ユーザーのデジタルメディア広告接触による行動の可視化
「TVBridge Ads」は「VALIS Cockpit」との連携が可能なので、テレビ視聴ユーザーがデジタル広告に接触することでインターネットの中でどのような行動をしているのかを分析することが可能です。
■「VALIS Cockpit」とは・・・
ユーザーの日常的なWeb行動を、人の恣意が入ることなくAIが分析し、顧客の特徴・興味を可視化するツールです。蓄積された4億UB/3,500置くレコードのユーザー行動データを活用し、クライアントサイトの「外で」ユーザーが「どこで/何を」しているか可視化することが可能です。
例えば、CVしたユーザーの過去4週間の行動・アクションを起こした1週間後というタイミングで、どんなキーワード・URLに接触した結果、アクションするに至ったかを可視化できます。可視化のロジックは、アクションを起こした人・起こさなかった人を比較して、アクションを起こした人だけが持つ特徴を拾い上げる形になっています。
▼VALIS-Cockpitについてはこちら
この「VALIS Cockpit」と連携すると・・・
テレビ視聴ユーザーにデジタル広告を配信することによる態度変容の計測や、興味を持ったキーワードを可視化できるようになります。この態度変容や興味キーワードがわかるのが大きなポイントで、通常のレポートだと数的なデータがメインになると思いますが、定性面のデータも取得できるのが特徴です。
例えばCM視聴ユーザーが「TVBridge Ads」の広告に接触し、その結果どのような行動を起こしたかが見えるので、CMを視聴していないユーザーに対しても同様に分析を行うことで、CM自体の効果がどうだったのかを見ることも可能です。
国内大手4社のデータを活用できるだけじゃなく、ユーザーの細かい行動データも分析できるなら、CMを見たからCVしたのかとか、いろいろなことがわかりますね!
そうなんだよ。ではもう少し掘り下げて具体的にTV視聴データをどのように活用していくのか、について紹介しよう。
テレビ視聴を起点としたDSP配信の考え方
ターゲットセグメントをどのように作っていくのか、どんな目的で作るのかを整理していきます。
まず「テレビ視聴ユーザー」と「テレビ未視聴ユーザー」の2つに分けて、そこから更に細かく分けながらセグメント化していきます。
テレビ視聴ユーザー『番組』
テレビ視聴ユーザーにはいくつかの接触ポイントがありますが、その1つは「番組」です。さらにそのなかには「特定ジャンル」や広告主が提供している「提供番組」といった特定の番組に絞り込んでのセグメントが作成可能です。
テレビ視聴ユーザー『CM』
CMに関しては、自社のCMに接触しているユーザーや、自社以外のCM(競合他社のCM)に接触しているユーザーといったセグメントが可能です。
テレビ視聴ユーザー『見方』
ユーザーがどういう風に見ていたのかという「見方」でもセグメントが可能です。
例えば、ゴールデンタイムや朝方といった「時間帯」であったり、「ハイ・ローテレ」といったあまりテレビを観ない、接触頻度が少ない、逆に凄くテレビ好きといった「見方」でのセグメントも可能です。
テレビ未視聴ユーザー
テレビ未視聴ユーザーは、広告主側でCM出稿がある場合と出稿していない場合で分ける形になりますが、いずれにせよCMには接触していないユーザー群となります。
そして、これらをどのような目的で展開していくのかというと・・・
番組:統合的FQとリーチ効率
テレビのとある番組に接触していて、その後リーチを獲っているWeb側で、どのようにFQ(フリークエンシー)を高めていくかが目的になります。
CM:統合的FQと認知補完
自社CMの場合は、接触した人にWeb広告を配信して、そこのFQをデバイス間をまたいで高めた場合、どのような効果が得られるのかを見ていく形になります。
自社CM以外(競合CM)の場合は、認知補完をしていくのが目的になります。
見方:リーチ効率
特定の時間帯に観ている人には、リーチ効率というのをWeb側でどう上げていくかが目的になります。
TV未視聴ユーザー:TV施策の補完
自社CMを打っている場合でもテレビで接触していないユーザーもいるので、そういったユーザーに施策を打つといった「TV施策の補完」という目的があります。また最終的にCM出稿していなくても、ユーザーに向けたブランディングを行っていくことになるので、CM無でのセグメントの考え方もできるでしょう。
なるほど、こんな風にセグメントされていくんですね!
そう、プランの中でも多いセグメントは、この5つになります。
プランで多いセグメント設計
①自社CM接触
一番多いパターンで言うと、自社CM接触。デバイスを跨いでフリークエンシーを上げていこうという考え方。
②自社CMに接触していない
自社CMに接触していない人の補完という形でやっていく考え方。
③特定の子供番組視聴
例えばゴルフ・子供といった特定の家庭環境をターゲットにしようと思った際に、番組視聴からセグメントを作っていくという考え方。特にテレビの場合は視聴者層が広いので、その中から特定層を捕まえていく考え方。
④競合業種のCM接触
競合はCMをやっているが、自社ではやっていない時にこのセグメントにしたり、シーズナリティ的に投下量が多くなるタイミングでCMが当たっている人に向けて、自社はWeb側で当てていくという考え方。
⑤提供したかった番組閲覧ユーザー
提供したかった番組、つまり自社との親和性が高いと思われる閲覧ユーザーに対して広告を当てていくという考え方。
自社の置かれている状況に合わせて、セグメントを設計していくことが重要です。では、次に事例について紹介しますね。
成功事例の紹介
事例①:スポーツ団体
悩み
テレビで試合やチームの特番も放映しており、自社サイトへの来訪やチケットの購入に繋げたいが、番組視聴だけではCVRに大きく寄与できていない。
実施
テレビで試合を観戦したユーザーや、チーム特番を視聴したユーザーにWebで再アプローチし、ライト層に対しての認知拡大・来場促進を実施した。
結果
来場者数が2倍になった。更に番組視聴だけのWeb未接触ユーザーと比較すると、サイト来訪は16倍、チケット購入は8倍と集客~CV落とし込みまで大幅に上昇させることができた。
事例②:不動産業者
悩み
競合と比較して自社サービスの認知度が低く、CM出稿しているものの効果も可視化できていない。
実施
自社CM視聴ユーザーへのWebでの再アプローチと、未視聴ユーザーへの補完による双方向への認知拡大・訴求を実施した。
結果
低単価でサイトへの誘導を効率化・リーチを最大化させることができた。また「CM未視聴+指名検索流入ユーザー」と「CM視聴+指名検索流入ユーザー」の比較分析をVALIS-Cockpitで行った結果、CM視聴が指名検索のきっかけになったことが明らかになった。
しっかりとセグメントした上で、テレビとWebを掛け合わせた施策をするとこんなにも効果が出るんですね!連携することのメリットだけじゃなく、見えにくかったCMの効果検証にも繋げられるので訴求内容の提案もできそうです!
広告は打ってお終い、では無いからね。そこからどのように次の施策へのヒントが得られるかが最も重要です。 それでは最後に、今多くの人が利用しているOTTと組み合わせた新たな手法も教えます。
OTT?ですか…?
市場規模の成長が見込まれる「OTT」
OTTとは
OTTとは、Over The Top(オーバー・ザ・トップ)の略称で、テレビやラジオのような電波放送ではなく、インターネット回線を介して閲覧可能なコンテンツ配信サービスの総称を指します。
今多くの人に利用されているものだと「YouTube・TVer・Spotify・Instagram」などのサービスがこれに該当します。
OTT市場と視聴者の傾向
OTTの市場規模というのは広告と課金収入という形ですが、右肩上がりで今後も成長すると見込まれます。
日本人のOTT接触頻度をデータで見ると、平日だと3割、週末だと半分くらいの人が接触していることがわかります。また、そのうちの24%の人が、広告視聴するというデータが出ているため、今後はOTTでの広告展開していくというのも非常に注目を浴びているのです。
媒体横断OTT広告配信パッケージ
「TVBridge Ads」と「Logicad」といったDSP経由で複数のOTT媒体の広告枠に対しまとめて配信が可能なパッケージです。もちろんDSPですのでレポートも充実しており、OTTサービス単体にそれぞれ出すよりも様々なメリットが得られる形になっています。
メリット①:特徴の異なるOTT媒体への配信とFQコントロールによるリーチ数の最大化
複数のOTT媒体の重複ユーザーがわかるため、FQコントロールを併せてリーチ数を最大化していくことを可能にしております。
メリット②:独自データを掛け合わせたユニークなターゲティング
DSP側が持つデモグラやエリア、興味カテゴリといったセグメントや「TVBridge Ads」の視聴データを掛け合わせることが可能になるので、他ではできないユニークなターゲティングが可能になります。
メリット③:媒体を横断した配信状況レポートを提供
媒体単体は勿論、合算したレポートといった横断した配信状況をご提供します。動画の指標・CV計測・インクリメンタルリーチ・ブランドリフトサーベイといったレポートも可能です。
僕もほぼ毎日TVerを観たり、Spotifyで音楽も聴いたりしていたので、そういった所と掛け合わせて広告を打てるのは凄くいいですね!
今後も成長が見込まれる市場なので、ぜひ抑えておきたいポイントだよね。
アナイグマさん、色々と教えていただきありがとうございました!これを基に提案してみます!
アナイグマのひとこと
マスとデジタルの融合とか、OMO(Online Merges with Offline)とか、 消費行動が複雑化するなかで言われることはホント多いんですけど、実際はそんな簡単なわけもなく、施策を実行してみたところで紐解いてみたら「それっぽい」レポートがでてきて、「それ以上」はわからない、なんてこともあります。獲得とか成果を求められるようになったデジタル広告と、認知やブランディングを主としたCMを、そもそも同じ土俵で語ることって難しいんです。だからこそ重要になるのが「なんとなく」ではなく、マーケティング的に言うと「拡張」ではない実際のデータを、どれだけ多く「量」を持ってきて、適切な形でセグメント化して配信する。更にはデータを分析できる環境があるかどうか、なんです。多様化していく世の中では、その数だけ広告の訴求内容も幅広くなっていくことになるでしょう。正解はひとつではありません。分析を続けることで新たな示唆が見えてきたり、無駄なこともわかってくる筈です。これだから分析はやめられないんですよね。