最近よく聞くリテールメディア。特にデジタル分野では国内外問わず話題になっているので、AmazonやWalmartという企業名を通して耳にしたという方もいらっしゃるのでは?
今回はリテール企業だけでなくメーカーやブランド側にも多くのメリットをもたらす新しいデジタル広告として期待され、2023年は国内にて飛躍の年になるのではと言われるリテールメディアについて、事例と共に説明していきます。
リテールメディアとは?
小売り(リテール)企業が自社で保有する消費者の購買データ等を活用して広告を効果的に配信する仕組みの事を差します。
小売店は実店舗での購買データやECサイトでの会員データ、いわゆる「1stPartyデータ」を独自に収集・所有しています。そのデータを活用し緻密なターゲティングを行い広告やクーポンを配信出来るような取り組みです。
リテール企業がメーカ向けに自社データを活用した広告メニューを提供しているビジネスモデルであり、その市場はアメリカでは2024年までに611億ドルの広告費増加、日本では2026年には市場が805億円規模まで拡大すると予想されています。
参考引用:What you need to know about retail media in 5 charts:https://www.insiderintelligence.com/content/what-you-need-know-about-retail-media-5-charts
参考引用:CARTA HOLDINGS、リテールメディア広告市場調査:https://cartaholdings.co.jp/news/20220927_2/
リテールメディアが注目されている理由
リテールメディアは実は2012年ころからAmazonも取り組みを開始しており、真新しいビジネスモデルではありません。
ですが近年どんどん注目を集めています。
近年のWalmart社の成功事例で注目を浴びている事もありますが、各企業のDXが進んだことなど、様々な理由もあげられます。
その中でもリスクヘッジの観点から抑えておきたい要因を幾つかご紹介します。
新型コロナの流行と打撃
2020年以降、外出自粛でリテール企業は実店舗の売上減少に直面した事もあり、ECへ大きなシフトチェンジを余儀なくされました。企業もネット中心で商品を売り、消費者もネット中心で購入する。そんな購買スタイルが当たり前になり多くの企業がECサイトの構築に本格的に力を入れると同時に、新たな収入源として次々とリテールメディアに着手していきました。
3rd Party Cookieの廃止
こちらも大きな話題になりましたがGoogleが3rd Party Cookieのサポートの完全終了を発表したことによって、多くの企業がポスト「3rd Party Cookie」を模索しました。
ターゲティング広告は「3rd Party Cookie」に頼った配信をしている事もあり、そこに頼らずに「1st Party Cookie」を基に配信できる新しいモデルでもある「リテールメディア」に矛先が向いている事も注目されている理由の一つです。
【POINT】cookieについてはコチラの記事も合わせてどうぞ!
⇒1st party Cookieと3rd party Cookieの違いとは?Cookieの規制とその影響も踏まえてご紹介!
⇒Cookieレス時代の代替えは本当にIDとSNS?「個を追わない」にはコンテンツ戦略がカギ
メーカーは中々データを蓄積できない
メーカー各社は商品をリテール企業へ卸し、販売してもらっています。例えば商品が一つ売れたとしても詳細な消費者の購買データはリテール企業に残り、メーカー側にはほとんど共有されません。
プライバシーに関わるので当然ですが、これではいつまで立ってもメーカー側に重要な情報が伝わらず、広告や販促、開発にも消費者のデータを反映することが出来ません。
そのためメーカー側とリテール側が組むことで、メーカー側も直接的な接点を構築することが可能になるリテールメディアの価値が注目されているのです。
リテールメディアのメリット
リテールメディアは広告枠を提供するリテール企業、広告を掲載するメーカーどちらにもメリットをもたらしてくれます。それぞれの立場で説明すると…
リテール企業(広告枠を提供する側)
・自社特有の属性を活かした顧客データを有効活用出来る
・実店舗の広告枠で広告収益を得られる
従来の実店舗のみの経営をしていくよりもリテールメディアを併せて行うことで、広告枠の収益が加算され店舗全体の利益率の向上が見込めます。
また顧客、購買データは多くの企業にとって消費者を知り自社を知ってもらうための重要な情報になるので、そんな貴重なデータを活用し提供することでそれぞれの実店舗の付加価値を高めることができます。
メーカー(広告を掲載する側)
・購買に直結している消費者データを基に広告ができる
・リーセンシー効果が高く、消費者の購買意識に影響を与えやすい
・広告で生じた見込み客と実際の売上への影響(費用対効果)を把握しやすい
購買意欲の高い人が集まる場で、データを基にした親和性の高いターゲットに広告を打つ事で高いCV率や費用対効果を見込めます。
また顧客データを基に広告を打つことで、キャンペーンを打った見込み顧客が実際に購入をしたのかどうか、キャンペーンを見てからどう行動したのかなど、消費者の動きを可視化できる事もメリットの一つです。
リテールメディアを活用し台頭する企業
リテールメディアは海外でも盛んに活用されており、国内では徐々に注目が集まっている状況です。
ここで様々な企業がどのようにリテールメディアを活用しているのか、事例を基にご紹介していきます。
Amazonの活用事例:海外の事例①
アメリカのリテールメディアの市場の約8割のシェアを占めている「Amazon」です。
いわゆるEC系リテールメディアと呼ばれ、ECサイト内の検索ワードに対してマッチする内容の広告(スポンサー枠)を出すようなシステムでリテールメディアを提供しています。
そんなAmazonはデジタル広告プラットフォームとしてGoogle、Facebookに継ぐ第3位の広告プラットフォームでもあり、ストアフロントというAmazon内に自社ブランド専用サイトを作れるような広告メニューを作るなど、力を入れ続けています。
参考引用:https://www.insiderintelligence.com/content/amazon-is-now-the-no-3-digital-ad-platform-in-the-us
ウォルマートの活用事例:海外の事例②
アメリカの小売り大手のウォルマートが「メディア化」していると注目を集めています。アメリカの市場調査会社のeMarketerによるとデジタルリテールメディア市場において、ウォルマートがAmazonに継ぐ2位までシェアを伸ばしているそうです。
ウォルマートはデジタル広告を扱う部門「Walmart Connect」を立ち上げて、広告プラットフォーム事業を強化しました。
広告スペースを拡張し、自社が蓄積した購買データを企業側に提供する事で合理的な広告出稿を行い、収益をあげてきました。
かねてから行ってきたメディア化戦略の結果が、目に見える形で結果へと繋がっている成功事例です。
ファミリーマートの活用事例:国内の事例①
ファミリーマートは店舗のメディア化に取り組んでおり、実店舗にサイネージを取付け広告面として活用するなどをしています。いわゆる実店舗系リテールメディアを国内でも積極的に行っている代表的な例です。
サイネージを設置した店舗は設置していない店舗に比べ、売上が大きく伸びるという数値データも出ていたり、商業施設と連動したサイネージ(クロスメディア配信)によって、店舗での購入率が平均40%も上昇するという結果が出ています。
参考引用:https://gate-one.co.jp/news/press/199/
参考引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000097469.html
イオンリテールの活用事例:国内の事例②
イオンリテールは広告ビジネスへの拡張を見据えGoogleと共に取り組みを進めてきました。イオンリテールは利用者約670万人の「イオンお買い物アプリ」に蓄積された購買データの分析、解析を行い、広告へ活かすシステムを強化しました。
またアプリの利用促進を行うことでリアルタイムデータを積極的に取得し、「新鮮且つ整理されたデータ」として活用できるように強化しました。
このデータ分析の強化でイオンリテールが強みにしている事は、自社アプリで得られる情報で「消費者の行動」が可視化されるようになったことです。
「○円以上購入する人」「来店頻度が○日の人」「●カ月来店していない」など実店舗だからこそ見える詳細なターゲットのデータを基に広告配信が可能になったのです。
まとめ
今回はリテールメディアの概要を紹介しました。
EC系から実店舗まで幅広いリテール企業の新しい広告配信の在り方であると理解すると共に、これから多くの注目を集め、市場も拡大していく分野でもあることを覚えていてください。
オンライン、オフラインに関係なく、リテール企業は消費者との関係がとても密接です。そしてその「接点」にはたくさんの情報やヒントが隠されており、それが新たな収益の源になることもあります。
そんなリテールメディアを強化したり、新たな広告施策として検討してみるのはいかがでしょうか?
これからリテールメディアを出稿しようとしている場合は、データの取得や精査、どのように活用して広告に活かすのか事前にしっかり検討する事が重要です。
データの整理が出来ていない、もしくはデータを正しく取得できないとなってしまうと、せっかくの施策も失敗してしまうことがあるので気を付けましょう。
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