マーケティングの今とこれからを探っていく連載コラム「ボーン・トゥ・プラン ~明日なき計画~」。第9回目の今回は、巷をにぎわす『ChatGPT』について。人とAI、生産と創造、技術の進化はすなわち私たちの文化的な進化にも繋がります。ただ、すべてをAIに任せてしまって良いのでしょうか?クリエイティブを通して『ChatGPT』が可能にしたこと、そしてそれでも忘れてはいけない人間らしさについて「アナイグマ」と一緒に考えて行きましょう!
第8回はこちら。
アナイグマって??
イントロダクション
未だWBCの興奮冷めやらぬ朝のアナイグマさん。
いろんな選手たちに想いを馳せながら、今回もココロ動かされ過ぎて気持ちが溢れる…
選手たちそれぞれが様々なバックボーンを持ち、色々な感情を抱きながら突き進んできたからこそ紡ぎ出す言葉、精神、動きが私たちを魅了しているな、としみじみ。
全てを言葉にするのは難しいので、この感動を今はやりのChatGPTさんに代弁してもらおうかな。
と思ったけどなんか違う…これならTwitterなどで見かける野球ファンの興奮溢れる投稿の方が感動が伝わるよな…
違和感を感じずにはいられないアナイグマさん。ではここでそもそもChatGPTってなんだっけ?
という部分からお話ししていきましょう。
ChatGPTとは?
SNSやテレビのニュース等でも”AIの進化がスゴイ!”とホットな話題となっている「ChatGPT」。まだちゃんと理解してない方も多いと思います。
ChatGPTというのはOpenAIという企業が開発したAIによるチャットサービスです。
人間がチャットで質問した内容に対して、AIが回答を生成して返信をくれるものです。
ただ質問に答えるだけでなく、自然な文章を生成することが可能で日本語を含む多くの言語に対応しているとても優秀なサービスです。
前述のように色々な質問に答えてくれるChatGPT。
今まで”機械的な算出”を得意としていたAIが、”人間らしい文章を生成”するまでに人間に近づく成長を遂げています。
使い方次第ではランディングページや記事のライティング、クリエイティブの画像生成も出来てしまう程。
クリエイティブ領域でもChatGPTが重宝される?
AIが苦手だろうと言われていた”創造性=クリエイティビティ”な部分も不可能ではなくなったことで、AIのコンテンツライターというものが誕生するのかもしれません。
もしAIのコンテンツライターが誕生したら、コンテンツ作成に掛かる時間が大幅に減少することになるでしょう。もしかすると人間のライターも不要になるかもしれません。
人間が2日がかりで作成するものをAIは30分も掛からず作れてしまうのですから。
いずれAIコンテンツライター作の制作物が大量生産され、私たちが目にするほとんどのコンテンツがAIが作ったモノという時代が来るかもしれません。
ChatGPTはどうやって質問に答えているの?
ここら辺のAIの構造というものはよくわからないので、以前「ヘッドレスコマース」の回でお世話になった開発のエース「おかっち」を召喚!
そもそも、ChatGPTってどうやって文章を作っているの?
私も興味ある分野なので調べてみました!ただ「ChatGPT」が出来上がるまでの構想やソースコードって非公開なんですよね。だから文献とかを見てみて理解したことを伝えますね。
参考文献:https://arxiv.org/pdf/2203.02155.pdf
うわ英語!これ読んだの!?
そうですね。他の文献とかも参考にしつつで目を通しましたよ。現在の「ChatGPT」が出来上がるまでに、搭載している言語モデル「GPT」がGPT‐1 → GPT‐2 → GPT‐3 → InstructGPTという進化を経ています。この進化の中でも「GPT‐3」「InstructGPT」がChatGPTへの開発に大きな影響を与えているので、ここから説明していきますね。
「GPT‐3」のデータソースはネット上にある情報です。
多くのウェブサイト、オンラインニュースの記事や百科事典、電子書籍、SNSなどのユーザー投稿、Wikipediaのテキストデータなどを基に生成されており、日本語で生成される文章(日本に特化したデータ)では情報源でWikipediaに多くを頼っているようです。
そしてその情報量は45テラバイトのテキストデータ。
1テラバイトでデジタル画像200万以上の容量なので本当に膨大なテキストデータの量です。
入力された質問を解析してその質問に対する答えを膨大なデータの中から探し、文章を生成する際には次に繋がる言葉を予測しながらその連続で文章を構築して、ネット上にある情報との正当性と有用性を確かめながら作っています。
要約すると「GPT‐3」の回答ソースはネット上にある情報。
つまりネットに書いてある事しか出てこないという事。
ネット上で質問の答えを探す、ということは情報量が多いほど「正」。
ただ、ここで「GPT‐3」の場合、完成された文章が”有害である”場合がでてきてしまったのです。
センシティブな内容だったり、差別要素を含んだ内容の文章を構成してしまっていたので「InstructGPT」でその部分を改善しました。
そしてこの「InstructGPT」をChat形式にしたものが「ChatGPT」なのです。
つまり…
- データをたくさん収集
- 組み合わせて文章を構築
- WEB上のデータソースで適性判断して回答
という事をしているワケですね。
なるほど!ネットに落ちている情報を拾って来ているわけですね。
ChatGPTは0から1は作れない。
ネット上にある情報を基に私たちの質問に答える『ChatGPT』
とても画期的な技術なのは間違いありません。
そしたらさ、おかっちも『クリエイティブ領域でもチャットGPTが重宝』されると思う?
うーん、利用用途によりますね。膨大な情報量を持っているので、知識向上や調査など目的の”補完”として活用するにはChatGPTは適任じゃないかと。ですが、答えのない、正解が決まっていないもの、などの発想力・アイデアを生み出す力が試される創造者の領域は、ぶっちゃけChatGPTの守備範囲ではないです。
例えばクリエイティブについて考えてみると…
情報量で補えるクリエイティブ
→評価基準が定まっているもの
- SEO対策
- プラットフォームの評価に適した文章
印象に残るクリエイティブ
→独自性、尖った表現があるもの
- 印象に残る、目を引く
- 気になる、クリックしたくなる
前者はChatGPTでいくつも答えを出してくれるでしょう。
正解、がある程度示されていて、その正解にあったテキストを構築することができればイイのですから。
しかし後者はどうでしょうか?
ChatGPTに日本生命保険のようなCMが作れるでしょうか?
このCMは泣けるよね。子供がいたらなおさら。
そうですよね。これは人の気持ちに対する「感性に向けた」CMですよね。
複雑怪奇な人間のココロを惹く、独自性のあるこんな創造性・アイデアはネットを探すだけでは思いつかないので、ChatGPTには作れないでしょう。
荒廃したクリエイティブが蔓延する未来を迎えない為に
でも、ある程度答えがあるクリエイティブなら作れちゃうんだよね。
そうですね、SEO対策のようにアルゴリズムが設定されていて、その総合評価で順位が決まるようなものだったら、その整合性は高そうですね。
そういったクリエイティブ領域ならChatGPTに席捲されるのか…
ちょっと話逸れますけど、エンジニア界隈ではChatGPTにコードを書かせたりしてるんですよ。
え!そんなこともできるの?
はい。やっぱり新しい技術ってこともあり、ChatGPTは多くのエンジニアが活用しています。ちょろっとコードを書いてくれたり、デバッグ※をしてくれたりするからなんです。ただそうなると悪用する輩っていうのは出てきますね。
※プログラム内のバグを見つけて修正する
参考記事:「2年以内にChatGPTでサイバー攻撃」、IT専門家の78%が予想
この記事はChatGPTの技術力はサイバー攻撃に悪用されかねないと危惧する内容です。
文中で指摘されているように、何を作るか、どんなふうに考えて何を実現するか、というのはAIが考える事ではありません。あくまで人間が考える事です。
先ほどのクリエイティブの話に戻りますが、ただ単純にロボットやプラットフォームに評価されるだけの文章を作るのであればAIでも出来てしまうでしょう。それも早く大量に。
ただそんなクリエイティブが蔓延してしまうと、似通ったコンテンツが怒涛のように増え、どれも同じなので差異が無くなり、結果として評価されなくなる、という本末転倒なことが起こります。
今でもSEO対策の常套手段として、上位表示されている(評価されている)コンテンツの内容を真似るというものがあります。間違ってはいませんが、完全に模倣するのではなく独自要素を追加しないとコピー元のコンテンツには勝てません。
その独自性の観点は「ユーザー(人)の為に」なる情報かどうかです。AIでコンテンツを大量に生み出すということは、真似をするという手法のみを押し進め、この観点が抜け落ちていくことではないでしょうか。「人の為に」作ったものではなく「評価する機械の為に」作った”だけ”のものなら、最早コンテンツの存在意義すら無くなってしまいます。
クリエイティブというのは誰かに何かを伝える手段です。
「伝えたい気持ちが」失われたクリエイティブには何の意味もありません。
そんな荒廃したクリエイティブが蔓延する未来を迎えない為にも、「独自性」が加わったクリエイティブを作り続けるのはとても大切な事です。
ChatGPTはとても便利だけど、そこに”想い”はないって事だね。
AIとして便利になっても人が手を加えるのは絶対に必要だと思いますね。インドのAI開発の天才少年も同じようなことを言ってます。
参考記事:「AIは人工知能でない」15歳の天才が語った「驚愕の未来像」とは
GPT‐4もあらたに発表され、益々進歩するAI。
技術の進化で利便性も高まり、早く大量にコンテンツが作成できるようになったからこそ、最終的には人の手が加わった質の良いコンテンツが求められる時代になるのではないかと思います。
利便性、機械的な評価に惑わされず、人間の私たちは「人に何かを伝えたい」という気持ちを忘れずにコンテンツ制作に励みたいですね。
アナイグマのひとこと
エモーショナル、感情的なものって100%すべて相手に伝える事は難しいですよね。でも人間ってそこに共感を覚えたり、ココロを動かされたりする。受け手によって違うからそれで心を動かせるかもわからないし、伝えられるか不安だから頑張って考えるし、悩むんですよね。人を感動させるには、いつもと違った”何か”が無ければいけないと思います。それは決して突拍子のないインパクトがあるものだけじゃなく、日常とはちょっとだけ違うものでも良いんです。部屋の片づけをしていて、今はもう会えない人の写真が出てきた。他の人にとっては何でもない写真が、その人の心だけ強く揺さぶる。でもその写真自体では他の人にこの気持ち・感動は伝えられない。だからそれを自分ごと化できるようにするにはどう伝えればいいのかを考え、悩んで悩んで生み出していくのが広告なんです。そこに私たちは全力を注ぐんです。「煽るようなテキストを入れれば」「過剰にアピールすれば」みたいな短絡的な手法で、数撃ちゃ当たる的な広告なんて広告じゃないんです! …すいません。感情的になってしまいました。兎に角、人間の感情に訴えるなんて芸当はまだまだAI君には難しいでしょう。そもそも私(アナイグマ)が人間かどうか、なんて野暮な質問はしないでくださいね。