あらゆる産業において、競争力の維持・強化のためにDXに取り組むことが強く求められています。
しかし、関連用語としてよく使われる自動化を「DX=自動化」と勘違いしたまま、取り組みを進めている企業も少なくはありません。この2つの意味の違いを曖昧なままにしてしまうと、取り組み自体が誤った方向に進み兼ねないので、しっかり理解しておく必要があります。
今回はDXと自動化の違い、DXを推進するためのポイント等を詳しく解説していきます。
DXと自動化の違い
まず始めにDXと自動化のそれぞれの違いについて見ていきましょう。
DX
DXとはデジタルトランスフォーメーション(Digital transformation)の略語で、デジタル技術を活かしてビジネスやライフスタイルをより豊かにするための変容のことを指します。
単純に新しい技術を導入するだけではなく、生産性の向上のために目的を再検討したり、利益を上げるための戦略やプロセスをデジタルによって変革していくことが目的になります。DXの概念については、2004年にスウェーデンのウメオ大学に所属するエリック・ストルターマン教授が提唱したもので、今や世界中で推進されている取り組みの一つです。
経済産業省は2018年12月に「産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進施策について」を発表したり、2022年には企業がDXに自主的に取り組むために、デジタル技術による社会変革を踏まえた対応方法をまとめた「デジタルガバナンス・コード2.0」を改訂するなど、他国より優位性を持つための取り組みを推進するよう呼びかけております。
▶関連記事:『DX化』とは一体?「IT化」や「デジタライゼーション」との違い、そのメリットを解説
自動化
自動化とは、人間の作業を削減するためにテクノロジーを使って自動的にタスクをこなしていくことです。戦略やプロセスを変容することが目的であるDXに対し、自動化は同じプロセスの中で、テクノロジーを活用してどう効率化していくか・生産性を上げるかが目的になります。
自動化を進めることで作業の短縮による労働時間と人為的なミスを削減できるので、企業の生産性の向上に繋がります。現在では、飲食・交通・医療・金融といった様々な分野でテクノロジーを活かした自動化が進められています。
DX推進のメリットと課題
次にDX推進によるメリットと課題について解説します。
DXのメリット①:生産性向上・コスト削減
DXのメリットの1つ目は「生産性向上・コスト削減」です。
実は日本の労働生産性は世界と比べるとかなり低く、公益財団法人 日本生産性本部が公表した「労働生産性の国際比較 2022」によると、2021年の日本の時間当たりの労働生産性は、OECD加盟38カ国中27位で、就業者一人当たり労働生産性は29位という結果になっています。
そのため、日本では各企業が採ってきた方法を抜本的に見直していくことが必要不可欠となります。まずは自社の現状に合ったデジタル技術やツールを導入したり、業務プロセスを改善していくことで、様々な業務の効率化を図ることができ、結果として生産性の向上に繋げることが可能となります。
また、社内全体で様々な見直しが行われると、今まで無駄になっていた部分が可視化されるので、コスト削減にも繋がるでしょう。
DXのメリット②:新規サービス・ビジネスモデルが構築しやすい
DXのメリットの2つ目は「新規サービス・ビジネスモデルの構築がしやすくなる」ということです。DXを推進していくことで、これまでに取得できていなかった顧客の情報や市場に関するデータを自動で収集・分析をすることができるので、マーケティング戦略や新規サービスの開発に向けての意思決定にも活用できるでしょう。
DXのメリット③:BCP(事業継続計画)の対策
DXのメリットの3つ目は「BCP(事業継続計画)の対策に繋がる」ということです。
近年は、パンデミックや自然災害といった不測の事態にも対応していくために、DXを推進している企業も少なくありません。デジタル技術を活用することで、機能や業務を分散させたり、テレワークを可能にすることもできるので、外部要因(環境の変化)にも適応した企業作りに繋げられるでしょう。
DXのメリット④:働き方改革の促進
DXの推進によって、業務が効率化されると作業時間が削減され、残業や休日出勤といった労働時間も減るので、ワークライフバランスが改善されます。それによって、社員のモチベーションが上がったり、重点的に行うべき業務に集中できたりと、企業としての生産性向上にも繋がるでしょう。
DXの課題①:2025年の崖問題
DXの課題として「2025年の崖問題」があります。
これは経済産業省が2018年に公表したDXレポートで指摘した内容です。多くの企業に存在するレガシーシステムは、DX推進の大きな足枷になっており、世界規模の市場競争において不利な状況を招いていると言われています。これにより、2025年から2030年の間に日本に起きる損失は、MAXで毎年12兆円と予測されており、早急なDX推進が求められています。
DXの課題②:人材不足の問題
DXの課題として「人材不足の問題」があります。
世界的に見ても日本は「年功序列制度」が根強く残っていたり、新しいスキルを習得して変革を起こそうとする人の割合がそれほど多くはありません。そのため、人材が育ちにくく、ノウハウを持った人材が社内にいないという状況に陥りやすいです。DXを推進していくためには、エンジニアとしてのスキルを持った人材だけではなく、DX推進のための知識を持ち合わせた人材を確保する必要があります。
DX推進する際のポイント
次にDXを推進していく際のポイントについて3つご紹介します。
DX推進の目的・方向性の明確化
DXを推進していくためには、まず「DXを推進する目的」と「方向性」を明確にしておく必要があります。まずは自社の課題を全て洗い出し、それを解決するためにデジタルをどう活用していくべきなのか、最終的に行きつくゴール・方向性は何なのかをしっかりと明確にしてから進めるようにしましょう。
組織全体を巻き込んだ改革
DXの推進には、組織全体を巻き込んだ意識の改革や従業員の協力なしでは成り立ちません。そのため、まず経営層が率先してDXを推進したり、従業員に対してDXの目的と方向性を周知して、組織全体を巻き込んで取り組んでいく必要があります。
テクノロジーを導入
DX推進の大きな一歩を踏み出すためには、テクノロジーの導入は必要不可欠になります。
クラウドサービス、AI(人工知能)、RPA、IoTなどテクノロジーの種類は様々あるため、選定する際は自社の目的や方向性に合わせて選ぶようにしましょう。
DXの成功事例
次に、2022年に経済産業省が公表した「DX銘柄(東京証券取引所の上場企業から優れたDXの取り組みをしている企業)」をいくつかご紹介します。
株式会社ブリヂストン
タイヤ事業やソリューション事業、多角化事業を展開している株式会社ブリヂストンは、長い年月をかけて培われた「リアル(匠の技)」と「デジタル」を融合させた取り組みを行っています。
具体的には、新人技能員に確実かつ効率的に熟練技能員の匠の技を伝承させるために「技能伝承システム」を開発し、それを技能訓練に活用させて、一人ひとりのスキルと生産性を向上させました。
株式会社ファミリーマート
大手コンビニエンスストアの株式会社ファミリーマートは、顧客の利便性向上と店舗業務を削減し効率化するためのDXを推進しました。
具体的には、2021年11月に1,000万ダウンロードを突破したバーコード決済付きアプリ「ファミペイ」や無人決済店舗の実用化などが上げられます。
日本交通株式会社
1928年創業のタクシー会社である日本交通株式会社は、スマートフォンの普及率がまだ20%にも満たなかった2011年からDXを推進していました。
具体的には、タクシーの配車や支払い、現在地からタクシーの位置を把握が可能なアプリのリリースです。これにより、顧客の利便性を向上させたのはもちろん、タクシー業界の発展にも貢献しました。
まとめ
DXと自動化の違い、DXを進めるためのポイントについて解説しました。
DXは、将来的に企業を存続させるために必要不可欠な取り組みです。自社の現状をもう一度見直し、課題を1つずつクリアにしていくことで、事業改善や新たなサービス・ビジネスの開発、社員のモチベーション向上に繋げることが可能です。自社の目的に合ったやり方でじっくりと進めていきましょう。
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