昨今、マーケティングの分野において、ユーザーの理解を深めることは欠かせません。
より良い商品やサービスを提供するためには、ユーザーがどんな思いを抱いているのか、何を求めているのかを把握する必要があります。
そこで役立つのが「共感マップ」というツールです。
共感マップはユーザー視点に立って、感情や思考を理解するために使われるフレームワークです。
本記事では、共感マップとは何か、作成方法や活用のポイントなどについて詳しく解説します。
共感マップとは?
共感マップは、ユーザー視点での感情や行動を整理することで、ユーザーの潜在的なニーズを把握するためのフレームワークです。
エンパシーマップや共感図、共感図法と呼ばれることもあります。
マーケティングやUXデザインの分野で広く活用されており、ユーザーの真の欲求を理解するために大きな役割を果たします。
ユーザー視点で商品やサービスを考えることで、競合優位性を高めることが可能になります。
そもそも「共感」とは?
共感とは、他者が持っている嬉しい・楽しい・悲しい・怒っているなどの感情に対して、同じ感情を共有することを意味します。
相手と同じ感情になって考え、判断し、行動するのが共感です。
マーケティングにおいては「人は感情でモノを買う」といわれるように、ユーザーがどのような心理状態であるかを理解することは重要なポイントです。
共感マップを使ってユーザーの状況や感情、課題などを可視化することで、よりニーズに合った商品開発や改善計画を考えることができるのです。
ペルソナとの違い
ペルソナはターゲットユーザーの人物像の属性など表面的なことを可視化するのに対して、共感マップはユーザーの感情や思考、行動といった内面的な部分に着目する点です。
そのため2つは異なるものというよりも、共感マップはペルソナをより深く理解するためのフレームワークだと捉えるべきでしょう。
共感マップ6つの要素
共感マップは特定のユーザー(ペルソナ)を取り巻く6つの要素で構成されています。
具体的に書き出し整理することで、ペルソナのニーズを発見しやすくなるのです。
SEE:見ているもの
ペルソナが普段の生活の中で見ているものを書き出していきます。
周りには誰がいて、何を見ているのか、どんなサービスを使っているのでしょうか。
例えば、仕事関係の知り合いのSNSをチェックしている、話題のグルメが掲載されるWEBメディアを見ているなどです。
HEAR:聞いていること
ペルソナが周囲の人から言われていることや聞いていることです。
友人から「高校時代の元カレが後輩と結婚するらしい」と聞いた、子供から「今日のご飯おいしいね」と言われたなど。
いいことも悪いことも含め、ペルソナが生活する中でどんな情報や言葉が耳に入ってくるのか考えてみましょう。
THINK and FEEL:考えていること・感じていること
ペルソナは心の中で、どんなことを考え・感じているでしょうか。
「今日はどんな服を着ようかな」「来月のライブ参戦が楽しみ」といった感情をはじめ、「もっとキャリアアップしたいから転職しようかな」「いつかカナダに住みたいな」といった将来の夢や願望も含まれます。
他人に公言したり、実際に行動したりはしていないけれど、ペルソナが大切にしていることが何かを考えることが重要です。
SAY and DO:言っていること・行動していること
ペルソナが実際にいいそうな言葉や行動しそうなことです。
会社の上司・同僚への発言、友人・家族との会話、SNSで発信していることはどんな内容でしょうか?
ライブに行くために昼ごはんを節約している、毎日SNSで自撮りをあげている、タイパが悪いコンテンツは嫌い…などペルソナ自身が言っていることだけではなく、周囲の人との会話からも推測できます。
PAIN:痛み・ストレスに感じていること
ペルソナがストレスと感じていること、不安や不満、悩みについて書き出します。
例えば、「欲しいデザインのバッグがあるけど高くて買えない」「子供が生まれて昔のように友達と気軽に飲みに行けなくなった」「外食続きで最近太った気がする」などです。
ネガティブな感情こそ、解決できるものが即ち良い商品やサービスとなり得るのです。
この項目は、重要なヒントが隠れている可能性が高いので、特にしっかり深堀していきましょう。
GAIN:得られるもの・欲しているもの
ペルソナが欲しているもの、求めていることを書き出していきましょう。
仕事で「もっとキャリアアップしたい」、プライベートで「趣味の作品をもっと知ってもらいたい」など人それぞれ欲しているものはあるはずです。
ペルソナにとっての「成功」が何なのかといった基準も含まれます。
この項目はニーズとも直結し、前項と同じくとても重要な要素なので、しっかり突き詰めていきましょう。
共感マップの作り方
1.ペルソナを定義する
まず、共感マップ作成の核となるペルソナについて定義しましょう。
年齢、性別、居住地、家族構成、職業、年収、趣味、休日の過ごし方、価値観などを細かく設定していきます。
例えば、「ワイン好きで良く飲む」よりも、「〇〇(ワインの商品名)好きで週3日は飲む」の方がより具体的なペルソナ像が見えてきます。
顧客データやアンケート結果なども使いつつ、実際の顧客に近いペルソナを設定しましょう。
2.共感マップを書くシートを用意し、項目を埋めていく
前述の6項目が書きやすいシートを用意します。
マッピングしていくと視覚的にわかりやすく、メンバーとの共有も容易になります。
ネット上にも「共感マップ テンプレート」と検索すればたくさんあるので、自分が使いやすい形を使えば問題ありません。
そして、プロジェクトメンバーとブレストし、マップを埋めていきましょう。
この段階では、出てきた意見の可否は考えず、とにかく数を多く出していくことが重要です。
3.プロジェクトメンバーと共有する
同じ顧客インサイトを共有することで、全てのメンバーが共通認識を持ちながら、各担当のタスクを進めることができます。
プロジェクトのアイデアや企画内容を考えるとき、判断のブレがないようにこの共通認識があるのとないのとでは全く違ってきます。
4.ブラッシュアップする
共感マップは複数人で作ることで、誰か一人の主観に基づく偏りがないようにできてはいますが、まだこの段階ではあくまで「仮説」にすぎません。
インタビューやアンケートなどのユーザー調査を行い、ブラッシュアップを重ねていきましょう。
仮説に誤りがある場合は直し、新たな発見があれば書き加えていくことで、より精度の高い共感マップを作ることができるのです。
共感マップを使う目的
共感マップは何のために作成するのでしょうか?
作って終わりにならないよう、改めて把握しておきましょう。
ペルソナへの理解を深める
ペルソナはターゲットユーザーの表面的な情報に過ぎません。
年齢や居住地といったプロフィール的な情報にとどまらず、感情や行動までイメージすることで、より的確な判断軸を持って商品やサービスを提供することができます。
チーム内での認識のズレを防ぐ
プロジェクトメンバー全員がユーザーニーズの理解に共通認識を持てることも目的の一つです。
ペルソナの設定だけでは、そこからイメージするUXはメンバー間でズレが出てくるでしょう。そのズレをできるだけ小さくしてくれるのが共感マップです。
UXの最適化や、商品・サービスの改善
ペルソナを深く理解できれば、既存の商品やサービスに対してユーザーがどのように感じるか鮮明に捉えることができるでしょう。
この理解は、UXやUIの問題点を見つけたり、より良い設計に改善するために役立ちます。
つまり、共感マップとは、ユーザー視点でサービスをより良いものにするための重要なツールといえるのです。
共感マップの注意点
一人で作らないこと
共感マップは「感情」について多く書き出します。
そのため、1人で作ってしまうと気をつけていても主観的なイメージが入ってしまいがちです。
できるだけ客観的な視点から共感マップを作成するために、複数のメンバーを集め、思いつくまま様々な意見を出し合って作成していきましょう。
その際に大切なのはそれぞれの意見が良いか悪いかは考えないことです。
メンバーが出した意見が、設定したペルソナにとって正しい意見なのか間違った意見なのかこの段階では判断できないため、考える必要はないのです。
1ペルソナ1共感マップ
人はそれぞれ違う感情を持っており、同じ案件であってもペルソナが変われば共感マップの内容も変わってきます。
1つの共感マップを使い回すことはせず、各ペルソナごとに作成するようにしましょう。
共感マップを効果的に使うために
共感マップは作るだけではなく、実際に活用しないと意味がありません。
完成した共感マップをしっかりプロジェクトメンバー間で共有し、メンバー全員が共通の指標として活用できる環境づくりをすることも重要です。
また、共感マップから読み取れるペルソナの感情と行動に矛盾点があれば、そこにユーザーニーズが隠されているという考えがあります。
ペルソナへの理解を深めるために共感マップを活用し、読み取れる矛盾やその理由を考えることで、商品・サービスをより良くするための鍵となるでしょう。
共感マップの使用効果を高めるために、カスタマージャーニーマップを併用するのもおすすめです。
カスタマージャーニーマップは、「ユーザーが商品・サービスとの関わりの中でたどる一連のプロセスを視覚化したもの」です。
ペルソナが商品に興味を持ち、購入に至るまでの行動を可視化することで、今まで見逃していた課題や問題点が発見できるフレームワークです。
このカスタマージャーニーマップを共感マップをもとに組み立てていくことで、より現実的かつ具体的なユーザー像をイメージできるようになるのです。
まとめ
共感マップは、顧客の思考や感情、ニーズを視覚的に整理し、理解を深めるための効果的なツールです。
活用することで、ユーザーの価値観や課題をチームの共通認識として持つことができ、商品やサービスの改善に役立ちます。
共感マップを使うことで、ユーザーに寄り添ったアイデアや解決策を生み出しやすくなり、よりユーザー中心の視点で開発や改善が進められるでしょう。
一度作ったら終わりではなく、適宜ブラッシュアップしていくことも大切です。
ソーウェルバーでは、ユーザーの潜在的ニーズや関心を抽出・分析できるツール「HAKURAKU」を提供しています。
ユーザー視点でのマーケティングに課題を感じている方はぜひ一度ご相談ください。