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【顧客を導く】ほんの少しの誘導で自発的な行動変容をもたらすナッジ理論とは?

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マーケティングは「顧客に自社や自社の商品を選んでもらう」事が最も大切であるといっても過言ではありません。
ただ、選択肢を無理やりコントロールしようとしたりすると、反感を生み、却って顧客離れを引き起こしてしまいかねません。

そんな中でほんの少し手を差し伸べるだけで「顧客に自発的に自社にとって良い方を選んでもらう」事が出来るとしたら、ぜひ手にしておきたい方法のひとつですよね。
今回はそんな「自発的な行動変容」を促すナッジ理論について詳しくご紹介していきます。

ナッジ理論とは

行動経済学の知見を使って『人々に強制でなく、より良い選択を自発的に取れるようにする方法』を示す理論のことです。
他人の行動や考え方を変えてもらうのは難しい事ですよね。
しかし「強制」や「命令」をせずに、「そっと背中を押すように」、他人の行動を良い方向に向かわせることが出来るのがこのナッジ理論を用いた手法です。
このナッジ理論は、2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー教授によって提唱された概念で、既に多くの企業や公共政策で活用されています。

例1.スーパーのレジ前の床の足跡マーク

買い物カゴに買うものを入れて、さあレジに行こう!という時に、足元に足跡マークが間隔を空けて描かれているのを最近よく見かけませんか?

これもナッジ理論を活用した例です。
順番を守った整列を促すと共に、コロナ禍ではソーシャルディスタンスの目安としても効果を発揮しています。

例2.DJポリスの誘導

サッカーワールドカップ日本代表戦が行われた際に、渋谷駅前のスクランブル交差点は押し寄せたサポーターで大混雑していました。
そこで交通整理に乗り出した警視庁の隊員が「皆さんは12番目の選手、素晴らしいチームワークで駅の方向へ」と声掛けを行いました。

混乱していた現場がその呼びかけで一体化。ユーモアあふれるスピーチは良心に訴えかけ、人々は自主的に整列をしながら誘導される方へ進んでいきました。
結果、逮捕者やけが人などを出すことも無く大きなトラブルも発生しなかった良い例です。

ナッジ理論の基本テクニック

ふんわりとイメージはついたけれど、それをどうマーケティングに活用していくのか、いざ施策を考えようと思うとなかなか思いつかないですよね。そんな時はナッジ理論の基本的なテクニックをイメージしてみると良いです。ここでは基本的な4つのテクニックをご紹介します。

デフォルト(初期設定)

選択してほしい選択肢を最初から設定し、異なる選択肢を選ぶ可能性を下げるテクニックです。

選択してもらいたい方を初期値にしていても、選択肢を狭めるようなことはNGです。
選択してもらいたいものが最も簡単に選べるけれど、他の選択肢も少しのアクションで選ぶことができるようにしておくのがナッジの鉄則です。

フィードバック

ある行動を起こすとすぐに反応が返ってくる仕組みを作り、自発的な行動を促すテクニックです。

すぐに反応が返ってくることでユーザーに学習をしてもらい、次から同様の行動をする際に指摘された内容にそって行動を起こしてくれるように誘導を行うものです。

インセンティブ

ある行動を取った後に、メリットや報酬を与えることで再度その行動を促すテクニックのことです。

例えば買い物の際に期限のあるポイントを付与する事で、期限が切れる前にポイントを使わなくてはいけないという意識が働き、リピート購入への誘導を行うなどの施策です。

選択肢の構造化

複雑だったり、数が多い場合の選択肢をわかりやすくすることで、特定の選択肢に導くテクニックです。

例えば特定の商品に「季節限定」「店長のおすすめ」と表示等をします。この表示があることで多くのメニューの中から、選ぶメニューが絞られて消費者が選択しやすくなります。

他にも同調効果やフレーミング効果などいくつか種類がありますが、ご紹介した4つが現在でも多く活用されているテクニックです。よく見かけるので、自社の施策で活かすときもイメージしやすく、取り入れやすいテクニックになります。

ナッジ理論を活用したフレームワークや法則

ナッジ理論には細やかなテクニックの他にもナッジ理論を基にしたフレームワークや法則がいくつも存在しています。マーケティング施策をプランする際には、こういったフレームワークに落とし込んで全体で考えていくと、効率よく立案ができます。
ここでナッジ理論を活用したフレームワークや法則をご紹介します。

松竹梅の法則(極端回避性)

例えばお料理のコースを選ぶとします。
松:1,000円・竹:6,000円・梅:2,000円、と金額の設定がされていると、「2:5:3」の割合で真ん中を選ぶ割合が多いという法則です。

6,000円 or 2,000円で見ると高いかな?と感じても、松竹梅の3択だと「6,000円」を何となく選びたくなってしまう不思議な心理学です。
これはLPやメニュー表等でも応用できる法則ですね。

フレームワーク『EAST』

このフレームワークは実施するナッジを評価するためのチェックリストとなるものであり、考えたナッジが効果的かを確認するものでもあります。

Easy(簡易的か?)
わかりやすく、簡単であるか。
ユーザーは少しでも「わからない」「面倒」だと感じるとすぐに離脱してしまいます。
手間なく利便性の高い方法を取り入れることが必要です。

Attractive(魅力的か?)
おもしろさ、楽しさ、もしくは中毒性のあるようなモノであることも大切です。
ゲーム感覚で楽しんでもらうことで、飽きることなく活用されることが望めるからです。

Social(社会的か?)
自分以外の人たちがどうしているのか、気付ける場所を作ってあげることも大事です。人は口コミや流行はつい気になってしまうものです。自分と同じ気持ちの仲間がいることを知って続けようと思える環境を作ってあげましょう。

Timely(良いタイミングか?)
適切なタイミングで適切な情報を届けるようにしましょう。
人の思考は瞬間的に変わってしまうものです。タイミングが良ければ良い方向に、タイミングが悪ければ、悪い方向へ極端に変わってしまうこともあることを念頭に、タイミングを見計らう事が大切です。

このフレームワークもポイントシステムなど、多くのマーケティング施策で活用されているので覚えておくと便利です。

フレームワーク『BASIC』

このフレームワークは行動プロセスの管理によく使われるPDCAというフレームワークをナッジ用により細かくしたものだと考えてください。

Behavior(行動)
顧客の行動を観察します。どのような場面で、何故この商品が選ばれるのか、あるいは、少数派の顧客がなぜこの商品を選ぶのか。例外的な人々の行動も観察することで機会を発見することができます。

Analysis(分析)
行動経済学的に分析し、例えば「この商品を選ばない」選択をした顧客が、何故その選択をしたのかを考えます。「選ばない」から「選ぶ」ようになるためのヒントを探していきます。

Strategy (戦略)
行動・分析から得られたヒントを元に戦略を立てます。
「選んでほしい選択」と「顧客の目的」の両方を達成するためには、どうすれば良いのか、そしてその選択が自発的に行われるのかを考えて行きます。

Intervention(介入)
戦略のアイデアが出たら、それをどのように商品やサービスに適応させていくかを具体的に考えて行きます。社内外から幅広く意見を取り入れながら、消費者に向けて説得力や合理性のある仕掛けを施していきます。

Change(変化の計測、見直し)
これらの一連のプロセスを経て実行したナッジの結果を確認します。
意図した通りの行動変容を起こしているか、どのくらいの成果が出ているのかを確認し、次の施策へと活かします。

このように顧客を観察し、どのように働きかければ顧客の行動を変えることが出来るのか、そしてそれをどのように実行していくかをフレームワーク化したものがこの『BASIC』です。ナッジを活用したマーケティング施策を取り入れようとしているマーケターは覚えておきたいフレームワークの一つです。

ナッジ理論を活用する時の注意

ナッジ理論の活用法としてテクニックやフレームワークなどをご紹介しました。
ナッジ理論は「良い方向へ誘導する」手法のひとつではありますが、これは誘導する側の目的と誘導される側の選択肢が最良かつマッチすることがとても大切です。
「誘導されている、操られている」そう感じてしまうと強い抵抗感を持たれてしまうこともあることを肝に命じてしっかり考えなければなりません。

あくまでも「顧客に良い方向へ向いてもらう為に行う事」であり「命令や強制」もしくは「利益の優先」が行われないようなナッジの活用を行ってください。

まとめ

今回は「ナッジ理論」をマーケティングに落とし込む事を想定してご説明しました。
顧客を良い方向に誘導できるのは、マーケターにとって良い事のように感じますが、あくまでも顧客のニーズに沿いながら、顧客のメリットとなるような誘導をしないと批判や顧客離れを起こしてしまうこともあります。
ナッジ理論を使ってマーケティング施策を考える際には、今回ご紹介したフレームワークなどを考慮しながらじっくり検討をしてください。

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