顧客の心を理解することはマーケティングの成功のカギです。
その助けとなる革新的な技術として注目を集めているのが、人間の感情や気持ちの変化を読み取ることができる「感情認識AI」です。
接客や医療・教育、セキュリティなど様々な分野で実際に活用され始めている感情認識AIですが、本記事では、その仕組みや種類、マーケティングへの活用などを解説します。
感情認識AIとは?
感情認識AIとは、人間の感情や気持ちをデジタルデータとして推定・識別するAI技術のことです。
表情、声のトーン、生体情報(心拍数や体温、発汗など)の変化から感情を読み取り、その人がどのような感情を持っているかを分析します。
近年のディープラーニング技術の発展により、感情認識AIは精度の向上と多様な分野での応用が期待されています。
例えば、サービス業における接客や電話対応でのスキルアップ支援や、マーケティングの分野では顧客の本音に近い感情を把握することが可能になります。
感情認識AIの種類
現在、感情認識AIには主に「文章」「写真・動画」「声」「生体データ」の4種類の入力方法があります。
文章による感情認識AI
人間が入力した文章(テキスト)を自然言語処理によって分析し、感情を判断します。
自然言語処理とは、人間が使っている言葉の意味をコンピュータが処理・認識することです。
例えば「彼は泣いていた」という言葉だけでは、嬉しくて泣いているのか、悲しくて泣いているのか判断できません。
「試合に勝った」「大切なペットが亡くなった」など前後の文脈を追加することで、その人間がどのような感情を抱いているのか判別できるのです。
ポジティブ・ネガティブ・ニュートラルと大まかに分けたり、喜怒哀楽や好き嫌いを細かく分類したり、感情のレベルがどの程度か数値化することができるものなどがあります。
あらかじめ基本的なデータと判定基準を学習させておけば、AIが学習データを蓄積していく設定もできるため、日々精度の向上が見込めます。
例えばチャットボットは、顧客との日常的なやりとりをためておけば、そのデータからAIが学習し、より顧客に寄り添ったコミュニケーションが期待できます。
写真・動画による感情認識AI
表情認識AIは、カメラを通して顔の表情から相手の感情を読み取ることができます。
これは、瞳孔の大きさや表情、視線、顎やえくぼ、唇の動きなどを読み取り、人の感情を推察するというものです。
ただ喜怒哀楽を判断するだけではなく、微妙な表情の変化や雰囲気から、興味を持っているか、嘘をついていないかなどの心の動きも読み取ることができます。
ディープラーニングや顔認識技術の進展によって大きく進化している表情認識AIですが、さらに本人も気づいていない無意識の感情や気持ちを測る研究も進められてます。
例えば企業内のストレスチェックや、広告視聴時にその商品への興味の有無を判断するのに活用できるでしょう。
声による感情認識AI
音声感情認識AIは、人間が発する音声から感情を分析する仕組みです。
日本語や英語といった言語に依存せず、声の大きさや抑揚、震えなどから感情を判断します。
例えば、「おはよう」でも、明るい気分の時と暗い気分の時は声のトーンが変わります。
このトーンから感情を読み取ったり、裏の気持ちを推察したりします。
声だけでコミュニケーションを取る必要があるコールセンターでの活用はもちろん、個人の声からメンタルヘルスの状態を判断するといった活用も可能です。
さらに今後「声の感情認識AI」が搭載されたロボットが、人間同士のように会話する時代がやってくるかもしれません。
生体データによる感情認識AI
生体データによる感情認識AIは、センサーで得られた脳波、心拍数、発汗などの生体情報から感情を認識する仕組みです。
これまでご紹介した3種類の感情認識AIよりもまだ発展途上の段階にありますが、スマートウォッチなどに搭載され、活用が増えてきました。
カメラや動画を使った表情の感情認識AIは、カメラの視野内に対象物がある時しか感情認識できません。声の感情認識AIも同様に、人間が音声を発した時だけです。
一方、生体データを用いた感情認識AIは、ウェアラブルデバイスを装着していれば簡単にデータを収集でき、利用シーンが限定されにくいのが大きなメリットです。
マーケティングにおける感情認識AIの活用
マーケターにとっても、感情認識AIは有力なツールです。
ターゲティングの強化
感情認識AIは、顧客の感情に基づくセグメントを可能にします。
例えば、WEB広告のクリック率を向上させるために、ポジティブな感情を示した顧客グループを特定し、最適な広告を表示することができます。
キャンペーンの最適化
広告コピーやデザインが、ターゲット層にどのような感情を引き起こすかを事前にテストできます。
視聴者の表情を分析することで、広告に対して「楽しい」「信頼できる」と感じているかを確認し、内容をブラッシュアップすることが可能です。
カスタマーエクスペリエンスの改善
感情認識AIをカスタマーサポートに活用すれば、顧客の不満やストレスをただちに検出し、適切なフォローを行うことができます。
例えば、チャットボットがネガティブな感情を検知した際には、迅速に人間のオペレーターに引き継ぐ仕組み作りができるのです。
感情認識AI導入時の注意点
今後ますます活用される場が広がっていくと考えられる感情認識AIですが、実はまだ課題もあります。
まず、生体情報や感情データはセンシティブな個人情報にあたるため、プライバシーの保護に配慮した運用が求められます。
それに伴う法整備なども必要となり、まだまだ時間がかかると考えられます。
また、一企業としては、感情認識AIの導入には一定のコストがかかります。
導入前にROI(投資対効果)を測定しておく必要があるでしょう。
まとめ
感情認識AIは、マーケターにとって「顧客の心を掴む」ために積極的に活用していきたいツールです。
ターゲティング、キャンペーンの最適化、顧客体験の向上など、さまざまな場面で使うことができるでしょう。
ソーウェルバーの分析ソリューション「HAKURAKU」は顧客理解を深めるために最適です。
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