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【第1回】九死に一生!頼りのメディアへの出稿NGから編み出した”期待の斜め上”を行くプランニングとは?

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マーケティングの今とこれからを探っていく連載コラム「ボーン・トゥ・プラン ~明日なき計画~」。第一回の今回は、経験や勘、思い込みで選びがちなメディアプランニングの罠について。
とある不動産関連企業から「メディアを探して」という依頼。よくよくヒアリングして考察すると見えてきた「本当に選ぶべきメディアのカタチ」とは?
広告主の”期待の斜め上”を行く提案内容を、デジタルマーケティングの申し子「アナイグマ」が紹介します。

アナイグマって??

イントロダクション

ある日馴染みの不動産関連企業の担当者から突然「メディアを探して!」という相談が…!

「就職が決まって引越しを検討している『新社会人』を狙って、とある『新社会人応援サイト』と提携してタイアップ広告を実施するはずだったのに、そのメディアに出稿できなくなっちゃった(泣)
代わりになる実力を持ったメディアってあるかな…?(焦)」

1本の切羽詰まった相談から始まるこのストーリー。
「本当に選ぶべきメディア」までの道のりには「思い込み」という落とし穴も!?
これは実際にメディアプランニングの現場で起きた、相談者も想定外のメディア選びのエピソードです。

×就活生 ○就活を終えた新社会人ってどこにいる?

新たなメディアを探していたクライアントが広告代理店から提案されたのは日本最大級の『就活生コミュニティサイト』でした。
これはわざわざヒアリングせずとも何故提案されたかは容易に想像出来ました。
「就活生」を束ねていて「会員ID」を持っているからです。

ん?待てよ?このメディアにいるのはクライアントが求めている「新社会人」なのか?
あくまで「就活生」が内定を勝ち取るために、口コミを通じて情報収集を行うサイトです。

すなわち…
「就活生」たちが閲覧するサイト?
であれば
「就活を終えた新社会人」はいない?
ということではないのでしょうか。

下手したら就活を終えた時点で退会している可能性も…。

一見理にかなった提案のようですが
よく考えてみるとターゲットが”似て非なるもの”になってしまっている状態。
聡明なクライアントはこれに気づき、候補から外していました。

ここまでの説明でお分かりの通り、今回のターゲットは「ちょっと難しめ」。
コミュニティがありそうだけど、実は就活生や25歳までの社会人も紛れ込んでいるという、何とも狙いにくいターゲットです。

そんな課題を持ったクライアントに対して私が提案したのは「All About」と「日経電子版」というメディアでした。

「いや、なんで?」と思う方もいるかもしれません。
クライアントも「これはどこからも提案されなかった」とビックリしていました。

何故この2つのメディアを提案したのか。
その根拠を説明していきます。

3タイプに分類できる「メディア」

突然ですが、私は長年のメディアプランニングの経験から
タイアップ広告のメディアは大きく3タイプに分類できると考えています。
今回のクライアントにあうメディアはどのタイプでしょうか?

【タイプ1】狙い撃ちメディア

・興味関心などから特定のコミュニティを持ち、会員IDを保持している
・メディアがユーザーを囲い、ユーザー自ら能動的に情報をとりに来るメディア

【タイプ2】集客のメディア

・特定のコミュニティを持たず、SEOによって多種多様なジャンルの記事で多くのリーチをとれる
・1記事に対するPVを瞬間的に集めることを得意とし集客力に優れたメディア

【タイプ3】信頼のメディア

・新聞、ニュースメディア等、信頼が厚い情報系
・政治や経済などのニュースの信頼性もあり、提携企業のブランド引き上げに貢献するメディア

今回の広告主に合うメディアは?

今回の広告主だとどのタイプが良いのか‥。
やはり「狙いにくいターゲット」という部分で考えれば『【タイプ1】狙い撃ちメディア』かな、と思いますよね。

ただ、今回の「新社会人」というターゲットで、混じりけなく「新社会人だけ数多く」を囲っているタイプ1のメディアはあるのでしょうか?

おそらく答えは『NO』です。
(0ではないですが会員数に限りがあるでしょう…)

そもそも立ち返ってみて、当初出稿を予定していた、とある『新社会人応援サイト』を考えてみます。
このサイト、実は「大学生向けメディア」のドメインの中にあるサイトなのです。
つまり「大学生」という大きなコミュニティメディアの中の「新社会人」を集めてきているようなものです。

そうなったときに『就活生コミュニティサイト』との大きな違いがあるのでしょうか?
ユーザー属性を考えると、『就活生コミュニティサイト』と一緒になる可能性が高いです。

『新社会人応援サイト』は○○PVを集められると言われたそうなのですが、極端な話その「○○PV」は「全てが新社会人ではない可能性」が無きにしも非ずです。
ただ『新社会人応援サイト』はほとんどの就活生が登録していて、多くの就活生のIDを持っている事は事実であり強みです。

ここで次に考えるべきは新社会人における「(○○PV以上の)集客力」と「提携することに意味がある」があるメディアはどこか?というとこです。

「(○○PV以上の)集客力」=「All About」

「All About」は皆さんご存知の通り総合情報サイトです。
その大きな特徴は「専門の知識や経験を持った人」がテーマにあった記事を作成しているということ。
メディア全体というよりも一つ一つの記事への集客力があり、SEOで集客を可能にする力があるメディアです。つまり『【タイプ2】集客のメディア』です。20年の実績があり記事の量も豊富でその蓄積から読者からの信頼も厚いです。

「All About」はメディアとして特定のコミュニティを持っているわけではないですが、1記事への集客対策を行うため○○PV程度は出ることが見込めます。また、専門家が記事を書いているのでコンテンツのクオリティは高水準のものが望めるのではないでしょうか。
今回の「新社会人になるための準備に関するコンテンツ」の作成もプロの領域でしょう。
したがって「新社会人になるための準備」を知りたい「新社会人」が見に来てくれるコンテンツが出来あがるのです。

ターゲットのブレもなく純粋な「新社会人」を呼び込める事が可能なメディアと言えます。

「(就活生という)会員を囲う」=「日経電子版」

日本経済新聞のデジタル版メディアです。
言わずもがな多くの社会人の会員を抱えているニュースメディアですが、実は4月の新規申込には多くの就活生、新社会人が集まります(以前同社から伺ったことがありました)。4月だけでなく、内定が決まって新社会人になるための準備のひとつとして、日経に申込を行うことも珍しくありません。それだけ日経というブランドは『【タイプ3】信頼のメディア』であり、類似のターゲットも一定数いるのです。

「All About」と違い「ターゲティング」に関しては少なからずブレが生じる可能性があります。
しかし本来タイアップ記事広告とは、メディアのブランド力を借りる形で自社のブランドを引き上げてくれるものです。
タイアップ記事広告の本来の目的に立ち返り「ブランディング」を考えるうえで日経電子版は申し分ないのではないのでしょうか。

つまり「ブランドロイヤリティ」を引き上げるにはうってつけのメディアなのです。

経験や勘、思い込みで選びがちなメディア

この二つのメディアもそうですが、「新社会人」というような特定のターゲットに対してタイアップ広告を掲載するとなると、途端に候補から外れてしまうメディアは多くあります。

それはみなさんの頭の中に「このメディアはこう!」「このターゲットはこう!」という思い込みがあるからではないでしょうか?

もちろん媒体資料や提案内容に記されている「特徴」や「属性」や色々な「数値」もありますが、その一つ一つは小さな人間の行動で成り立っています。
今回のように、代理店からも提案されなかったようなプランニングには「想像力」が必要不可欠です。「こういう人はどう動く?」「このメディアもっと長所があるのでは?」と考えを深めることが大切です。
思い込みや慣習があるとホントに選ぶべきメディアを見つけ出すことは難しいです。

また、タイアップ広告とはブランディングに用いられる広告手法でもあるということを忘れずに。
実施することで『この会社はこんなメディアに掲載できる企業なんだ』という価値をユーザーに示すことが出来るところも意義の一つです。その部分も忘れずにメディアを選べる視点を持てるようにしたいですね。

アナイグマのひとこと

蕎麦屋のカレーって好きなんですよね。カレー=カレー屋で食べるもの、っていうのはごもっともですけど、一口にカレーと言っても欧風カレーとかインドカレーとかそれぞれ全く別物で”似て非なるもの”だし、サラサラ系カレーが食べたいときに見ても店に入ろうとは思わない。そんなときに蕎麦屋のカレーを見たら、出汁が効いてるんだろうな、とかついでに蕎麦も食べられるし(逆ですけど)、という付加価値もプラスされてついつい店に入っちゃう。大事なのは「思い込み(カレー=カレー屋)」を外すってことだけど、突拍子もない(例えば「ふぐ専門店のカレー」)ところじゃなくて、ある程度「蕎麦屋のカレーって美味しいよね」っていう認識が世の中にあることを分かった上で見せることですね。