IPマーケティングは、知的財産(IP)を活用したマーケティング手法であり、世界的なイノベーション、規制遵守の意識や、知財の重要性に対する意識の高まり、知的資産保護の強化が進んだことで、IPサービス市場は2024年から2032年の間で年平均12.3%の成長が予測されています。※1
また、日本国内では、SNSやメディアミックスの普及により、コンテンツやキャラクタービジネスが大幅に成長しており、2024年度のキャラクタービジネスの市場規模は2兆7,464億円と予測されます。これらの動向は、IPマーケティングの重要性を強調し、企業が競争力を維持し成長するための鍵となる戦略の一つとして注目されています。※2
※1参照:株式会社グローバルインフォメーションhttps://www.gii.co.jp/report/act1501200-intellectual-property-services-market-growth.html
※2参照:矢野経済研修所https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3569
- 目次
- IPマーケティングとは
- IPマーケティングが注目を集める背景
- IPマーケティングの種類
- IPマーケティングのメリットと効果
- IPマーケティングのデメリットと注意点
- IPマーケティングの導入法
- IPマーケティングを成功に導くために
- IPマーケティングコラボ事例
- まとめ
IPマーケティングとは
IPマーケティング(Intellectual Property マーケティング)とは、知的財産(IP) と呼ばれるタレント、キャラクター、アニメ、ゲーム、映画、漫画などのコンテンツや登場キャラクターを活用したマーケティング手法のことを指します。
IPマーケティングが注目を集める背景
既存マーケティング手法のコモディティ化
Webマーケティングやコンテンツマーケティング、インフルエンサーマーケティングなどが普及し、競争が激化しています。プレーヤーが増え、各コンテンツの独自性が薄まってしまっていることもあり、IPマーケティングが新たなアプローチ手法として注目されています。
日本におけるIPの文化的重要性
日本ではアニメやゲームが主要なカルチャーとして確立されているため、IPとコラボしたキャンペーンは受け入れられやすいと言えます。
これらのポイントを踏まえ、IPマーケティングを効果的に実施することで、企業は競争力を高め、ブランドの認知度と忠誠度を向上させることができます。
推し活文化の普及
推し活文化の定着により、ファンが推しのIPのグッズ購入や投稿の拡散を習慣とする人が増えています。この文化は、IPを活用したマーケティングが効果的に機能する基盤を提供しています。ファンが推しのIPに関連する商品や情報を積極的に求めるため、IPマーケティングの効果が高まります。
メディアミックスとインターネットの普及
インターネット上での番組や動画配信サービスが普及し、作品がさまざまな手段を通じて露出する機会が増えたことも、IPビジネスが成長した理由の一つです。動画配信サービスを通じて日本のアニメやゲームなどが海外でも人気を博し、IPを活用したビジネスが世界的に広がりを見せています。
世界的な動向
海外では、動画配信サービスや社外資本と提携してIPを活かした新たな作品作りが行われており、IPビジネスが世界的に展開しています。例えば、ポケモンはYouTubeで数々の言語に対応したチャンネルを開設し、ワンピースはアメリカのスタジオと連携して実写版を制作するなど、グローバルな展開が進んでいます。
これらの要因が組み合わさることで、IPマーケティングは企業のマーケティング戦略において重要な役割を果たすことが期待されています。
IPマーケティングの種類
IPマーケティングは主に「タレントIP」と「キャラクターIP」の2つの種類が活用されています。
自社キャラクターを作り育てる方法もありますが、初期投資がかかることや消費者に認知されるまでにもさらにコストと時間がかかる場合が多いです。
タレントIPを活用する手法
タレント、例えば芸能人やアスリートをマーケティングに活用する手法です。タレントはマス層の知名度が高く、広告の注目性を高める効果があります。
また、特定のファン層に対して多大な影響力を持ち、ターゲット市場へ強くアプローチでき、共感を呼び起こせる点がメリットです。
既存の良いイメージが定着しているタレントを起用することで、企業イメージやバリューも向上することが期待できます。
キャラクターIPを活用する手法
ゲーム、アニメ、漫画などのキャラクターをマーケティングに活用する手法です。タレントと比較すると、IPの利用料金が安価であることが多いのが特徴です。
人気漫画のアニメ化や映画化など、コンテンツをさまざまなメディアで展開するメディアミックスもIPの活用例といえます。
さらに、キャラクターIPを活用することで、スキャンダルが起こるリスクが軽減されるメリットもあります。
IPマーケティングのメリットと効果
広告指標の改善
IPマーケティングは、広告の注目性を高め、認知度向上や売上向上のための起爆剤となります。特に、飽和状態のクリエイティブの中からユーザーの興味を引く広告を打ち出すことが重要であり、有名IPが広告に起用されれば、注目を集めやすくなります。
ターゲット層への効率的なリーチ
IPのファン層にリーチできるため、効率的に認知を獲得できます。自社のターゲット層とファン層の近いIPを活用すれば、効率よくターゲット層から認知を得ることができます。
ブランディングへの貢献
戦略的にIPを活用すれば、起用したIPが自社や製品、サービスのイメージとして定着するようになります。例えば、ソフトバンクモバイルの上戸彩さんや「お父さん犬」が「白戸家」という家族を演じるテレビCMシリーズは、10年以上のロングランでソフトバンクの顔になっています。
社内モチベーションの向上
自社サービスに有名IPが活用されていると、自社の認知がIPとともに高まり、従業員のモチベーションもアップする効果が期待できます。また、採用活動の際にもポジティブな効果がはたらくことが予想されます
IPマーケティングのデメリットと注意点
IPのイメージを守る必要
起用するIPのイメージを壊すと、そのファンの怒りを買うリスクがあります。ファンが望むイメージに沿った企画となるよう、IPのファン層についてしっかり調べておくことが大切です。
炎上リスク
IPが不祥事や不適切発言を行い炎上すると、起用側にも風評被害がおよぶ可能性があります。企業側からも謝罪や広告・CMの停止、コンテンツの一時中止などの対処が必要となることがあります。
IPマーケティングの導入法
自社・競合・顧客の分析
自社の強み、競合企業の戦略、そして顧客のニーズを分析します。特に、顧客のペルソナを作成し、どのような媒体を普段見ているか、好きなIPは何かなどを調査します。
相性のよいIPの選定
ペルソナと合致するようなファン層を抱えているIPを選定します。年齢や性別だけでなく、悩みや嗜好などさまざまな観点でペルソナと合致するファンをもつIPをリサーチします。
【戦略①】ゴール設定とKPI
起用するIPと最終ゴールが決まったら、ゴール到達度合いがわかるKPIを設定します。短期的にはCTR(クリック数)やCVR(コンバージョン率)、imp(インプレッション数)などをKPIとして設定します。
【戦略②】企画の検討
自社事業とIPの双方のよさが伝わるような企画を検討します。例えば、漫画やアニメの名言やフォーマットを盛り込んだキャンペーンや、映画のストーリー性を活用したキャンペーンなどです。
タレントやキャラクターのキャスティング
芸能人やアスリートなどのタレントIP、またはゲーム、アニメ・漫画などのキャラクターIPの事務所やキャスティング会社に問い合わせ、起用の交渉を行います。
企画に沿ったクリエイティブ作成
企画検討の際に設定したコンセプトに沿って、クリエイティブを作成します。IPのイメージと商品の魅力、どちらも伝わるようなトンマナで作ります。IPごとに表現に関してルールがある場合も多いので、事前に確認したうえで着手します。
IPマーケティングを成功に導くために
ブランド戦略を徹底する
IPキャンペーンの効果を最大化するには、徹底したブランド戦略が必要です。コラボ相手の選定や施策の内容をはじめ、ブランドのイメージやメッセージが一貫して伝わるようにすることが重要です。旬のキャラクターやタレントを起用するのは一時的な話題にはなりますが、その後継続的な効果が続かない場合もあります。
ターゲット・ペルソナをきちんと設定
商品やサービスに興味を持ってくれるユーザー像を明確に定義するために、ペルソナ設計を行うことが重要です。年齢、性別、職業などの属性に加え、価値観や生活スタイル、SNS利用状況などを踏まえてユーザー像を定義します。
コンテンツマーケティングから計画的に取り組む
IPマーケティングを有効活用するには、コンテンツマーケティングから計画的に取り組む必要があります。
自社のサービスとIPと、どちらの強みや特徴が生かせるコンテンツを作成することがとても重要で、両社の良さを引き出せたコンテンツが良い効果を生む可能性が高くなっています。
そのため自社サービスとIPとで整合性が高く、ミスマッチを起こしていないIP起用・コンテンツ制作が重要です。
IPマーケティングコラボ事例
「にじさんじ」×「セブンイレブン」
バーチャルライバーとして人気のVtuberグループ「にじさんじ」と「全国のセブンイレブン」で開催しているコラボキャンペーン。
対象商品を買うことで「にじさんじ ステッカー」をもらえるといった内容。
にじさんじの視聴者層の18〜24歳の男女を中心に興味を持ってもらい、セブンイレブンに足を運んでもらえるような、コラボの認知方法だと言えるでしょう。
セブンイレブンではほかにも VTuberグループ「ホロライブ」や「スーパーマリオパーティージャンボリー」などともコラボを開催しています。
「家庭教師のトライ(株式会社トライグループ)」×「アルプスの少女ハイジ」
テレビCMなどでも見たことがある人も多い人気CM。アルプスの少女ハイジの世界観にトライのキャラクターが入り込むシュールなアニメCMで、親子へのターゲット・インパクト、誠実さや真面目な雰囲気も伝わるコンテンツの高い企画・制作力が見える広告となりました。
「ポケモン」×「&be」
へアメイクアップアーティスト河北裕介がプロデュースするメイクブランド「&be(アンドビー)」は世界的な人気なポケモンとコラボした企画。
「&be」の人気商品のパッケージにポケモンのキャラクーがデザインされているアイテムを数量限定販売するキャンペーンで、発売前から話題を呼ぶような広告の企画になりました。
まとめ
IPマーケティングは、既存のマーケティング手法のコモディティ化に対する新たなアプローチとして注目を集めています。タレントやキャラクターなどのIPを活用することで、広告指標の改善、ターゲット層への効率的なリーチ、ブランディングへの貢献など、多くのメリットが期待できます。ただし、IPのイメージを守ることと炎上リスクへの対処が重要です。中長期的な戦略のもとで適切にIPを起用することで、幅広い業界・業種で効果的なマーケティング手法として活用することができます。
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